Air Info 103『つまりのまがりかど- vol.1 』
Air Info 103『つまりのまがりかど- vol.1 』
2014/10/03
2015年の大地の芸術祭参加が決定している「時の封ー妻有」。
現地にて植物を採集し、フィルム加工の処理を行い、一年を通した「時間」とその土地の「記憶」をたち現して
いく作品です。雪解け間もない5月の末から定期的な新潟入りが続いています。この長距離走のような時間をか
けた制作プロセスは、最初のコンセプトを起点として、様々な気付きや、その時々の思考の曲折に遭遇します。
その「思考のコーナーワーク」を言葉にしていく、制作メモ〜『つまりのまがりかど』を記していきたいと考えています。又、採集の時、道の曲がり角に植わっている植物がいつも気になります。曲がった後で、車を停め、
とぼとぼと歩いて戻る事が多い、、そんな制作日誌でもあります。
「つまりのまがりかど.vol.1.」
夏に引き続き、秋にも制作WSを開催します。「プラントハント!」と題し、一般の参加者と共に植物を採集
し、フィルム化作業迄を行っています。10月11日(土)〜13日(月)も開催します!
WS以外のいつもの植物採集は遠くを眺め、車に乗って西南東北、妻有の各地に赴き、集落に入り、山に入り、
川辺に近づき、眼についた花、葉、など樹々の部分を捕らえています。遠景から近景へのアプローチで、色と形
の発信源を辿るようなルーティンです。その時は植物を名前で見ないようにしています。時期によって、場所に
よっても、株によっても、葉の大きさ、色合い、厚みは変化していきますので、(それほど植物名の知識が豊
富ではないのもありますが、、)色と形の一期一会にアンテナを張り巡らせています。
又そのプロセスで興味深いのは、土地の人たちに出会い、植物情報を仕入れながら、四季折々の風景の中を漂い
ながらの採集です。中でもおじいちゃん、おばあちゃんの植物知識はどうしてこんなに深いのか、いつも関心し
てしまいます。「戦時中にはこれ(アオソ)を干して、編んで履物にした」とか「あそこに行けば、〜は生えて
るよ」などなど、土地の植物–記憶図鑑です。より身近に植物が生活と共に在ったのでしょう、そしてよりリアル
に植物と共に生きてきているのでしょう。「時の封–妻有」には欠かせない制作パートナーとなりつつあります。
もちろん地図を読み解きながらのアプローチもありますが、それは主に現在地の把握と妻有地区から出てしまわ
ないように、迷子にならないようにです。といってもいつもどこかで迷子です。
山に入ると、やはりそこには独特の匂いが漂います。森独特の。時に獣臭も。
梅雨時はその匂いの最盛期でした。京都に帰って近くの山で嗅いでみた匂いとは異なります。例え植生が同じよ
うでも、土が違ったらその香りは変化するからでしょうか。詳しい事、科学的な根拠を求めてはいきませんが、
その土地の空気感に包まれながら導かれる感覚に身と思考を半ば委ねながらの行程です。
そして、里地や市街地に降りてもその感覚は生きています。(おそらく)
それがこの地域の独特なカタチを作り出しているとも思っています。(仮定)
夏から続くWSでは、キナーレ里山美術館がある市街地区で「妻有–里山発見」を行っています。
「妻有」と言えば山間の集落と現代アートを結びつけた新たな試みとして広く世界に発信されて(現在では日本
各地で芸術祭が開かれており、その1つのモデルにもなった所です。)きましたが、、
街の中にも里山の記憶があるはず!ということで、その植生の名残や、里地残地を巡っていきます。(検証)
夏にはキナーレから歩いて5分の四宮神社(四宮公園)に赴きました。桜の大木と近隣の方々が世話をしている
と思われる紫陽花など、深い緑影が印象的でした。又、妻有での紫陽花の季節は他所と比べて長い。春〜夏の終
わり頃迄は、山から街のどこかで色と形を移しながら咲いています。
秋のWSはどこに行くのか?それは秋の妻有の匂いを嗅いでから決定します。美術館から徒歩で行ける市街地の
範囲内で、又様々な発見をしていきたいと思っています。
山の採集においては、今年は熊に注意!とよく耳にします。
熊にとっての餌(ブナやナラのドングリ)が不作だそうで、鈴を付けての採集を心がけていきます。
<つづく>
※最上画像は夏の採集後に車載し京都に向かう棚田コシヒカリ。